サイボーグとして生きる
マイケル・コロスト 著
椿 正晴 訳
ソフトバンククリエイティブ刊
ISBN4-7973-3421-5
失聴になり、人工内耳を埋め込んだ作者の世界観の変化と生活をつづった本です。またしても借り物です。人工内耳ぐらいでなにがサイボーグかとも言えそうですが、ソフトの変更、更新で聞こえ方も変わる、頭脳に対する音声入力装置を体内に埋め込むという点で、サイボーグそのものです。ソフトの切替で同じ音でも違うように聞こえるというのは違和感のある世界と思うのですが、人が作ったソフトで音を聞くということは、そのソフト製作者の意図や感覚が反映したフィルターを通して世界を聞くということで、そのことのほうが、私にとっていっそう違和感があります。その一方で、自分が聞いている音が“本当の音”という確証はどこにもないという事実は作者と同じことであり(大多数はそう聞こえているはずという思い込み)、その点において聴覚に対する不安定さは共有されるべきことなのかもしれません。ともあれ、私の場合は突然同じ音が違うように聞こえるわけでもありませんし、耳の横に磁石で受信機を取り付ける必要もないので、作者の“サイボーグ化”は異化された出来事として興味を持って読めるわけです(あまりに赤裸々な彼の生活が記述されているので、たまにうんざりすることもありましたが)。
サイボーグ化と人間進化は議論の的ですが、実現となるとまだまだ先のようです、感覚器官は難しいみたいですね。
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